リスペクトってやつ

今回は全然封神関係ない話です。


去年の十二月の頭に、ある同人の知り合い(以下Sさん)が亡くなったという連絡がきた。

ネット上にはよくあることだけど、私は勿論彼女の本名も知らないし、住んでいるところも漠然と東京周辺だとしか知らないし、Twitterで時々遊んでもらってはいたが、たとえば「フォロワーさん」などという言葉では言い表せない。いや、彼女にとって私はあらゆる意味で「フォロワーさん」だったが、この逆の言い回しというのはちょっと思いつかなかった。

多分「ファン」というのが一番近いのだと思うが、実は本とかは一冊も持っていない。

というのは私が彼女を知ったジャンルの後以降、一度もジャンルがかぶってないからである。というか彼女が活動している中で、私が原作を知っているジャンルさえほぼなかった。

ただジャンルに無関係なブログを持ってらして、私はずっとそこの熱心な読者だった、という話だ。

そもそもこちらが高校生だった時に(一方的に)出会ったので、当時はコンタクトをとろうと試みたことさえなかった。十代の人間にとって「大人」というのは、ジャンルが違えばやはり気軽にお話しできる存在ではなかった。私は結構怖いもの知らずの方で、同じ頃にネットで出会った六歳年上のジャンル友達とあっという間に仲良くなって今では一緒に暮らしているが、その私でもやっぱり少し物怖じしていたのだと思う。自分が活動していたジャンルではなかったし、それ以上に単にその人のしゃべることを読んでいたかった。「しゃべる」ことを「読む」という言い回しはおかしいのだが、テキストサイトや随筆好きの人には多少わかってもらえるのではないかと思う。


当時、ネットは黎明期だった。

同人関連のルールもマナーも今とは比較にならないぐらい、というよりも今とは違う方向にゆらゆらしていた。ネット自体のルールもあやふやな中でサイトやブログをやっている人間は、それなりにみんなポリシーがあったというのもある。

Sさんにもあった。とてもシンプルで明快なものだった。

私は多分今、それを半分ぐらい踏襲している。いや、踏襲しきれてはいないんだけど、何人かのお手本にしている人の中で大きな位置を占めている。

あとSさん、小説が非常にうまかった。

私の小説の評価基準はまず第一に文章にあるのだが、純粋に同人小説というジャンルにおいて、文章の技量で彼女を上回る人っていうのは少なかったと思う。別にそうたくさん読んでいるわけではないが、最低でも私が知っている中で三指に入るのは間違いない。

……ツイッターで出会ってから、本当に稀にツイッターで掌編を上げていたことがあった。私が見た限りでは一度だけだった。

私は、同じことをしている人の中で、ジャンル外の人間も一読に値する短文をあげた人というのをSさんしか知らない。私はツイッターに小説を上げない。それに値するものを書けないからだ。あのわずか140文字に、プライドのある人間が愛するものについての一篇を凝縮することがどれだけ難しいことか。この自己を律する姿勢を私に伝えたのは、Sさんだ。「自分の作品を卑下しなければいけないような作品なら公開しない」という姿勢、自分の実力に見合わないやり方で作品を垂れ流すことは絶対にしない、やりたかったら実力が見合うまで努力する、そういう姿勢である。人様にお見せするものなのだから。


これはなんだろう、とずっと思ってきた。なんでこんなに影響を受けているのか。


2010年の前ぐらいだったと思う。ツイッターを彼女がはじめて、私もいつの間にかはじめていた。勝手にフォローさせていただいて、相変わらずひたすら見ていた。ただのストーカーである。

しかし、はじめて声をかけた時がある。

私がSさんを知った当時のジャンルのサイトについて、彼女が話題に出したのだ。

目を血走らせて、まあこれは先方からは見えなかったと思うが、がんばって表面上は冷静にリプを飛ばした。ずっとあのサイトがどうなったのか気になっていたと言った。Sさんはサイトは原則的に消さない主義だと仰っていたので(これも私が踏襲している流儀の一つだ)、安心して時々見に行っていたらある日いきなり無くなってたんである。どうもプロバイダとの都合だったらしい。でも、Sさんは話しかけたことをすごく喜んでくれた。あのころから見てくれてた人がいるなんて!と言ってくれて、そこから時々喋れるようになった。他愛もないごはんのこととか例のジャンルの話(今でもお互い好きだったので)とかだ。

それで相互フォローになっていたので、今回Sさんのご友人からご連絡をいただけて、お別れ会にもお呼びいただいた。ご友人方とはほっとんど一人もお知り合いというのはいないのに、お邪魔させてくださいとお返事をした。

訃報からその日までは、冬コミを挟んで二か月ぐらい間があいた。


Sさんも滅茶苦茶こまめにツイッターとかで呟き続けるというタイプの方ではないので数日お見かけしないこともよくあって、亡くなられた実感はずっとわかなかった。

お別れ会が近づくにつれてああいないんだなあ、もういないんだ、とすごく思った。

それでまた考え始めた。はじめてお会いする皆さんに自分をどう紹介しよう?私よりずっと長いおつきあいで悲しみも深い皆さんに対して、ネットで時々リプを交わしてただけの人間が何故こんなところまで来たのか、どう説明しよう?

Sさんがブログのトップページに置いていた言葉をふと思い出した。

「三度の飯よりホモが好き」である。

結構1日に一回は思い出している。いや笑い事ではない。ホモが好きなんだこちとら。この言葉のテンポのよさがまたたまらない。三度の飯よりホモが好き。ちなみに「でも食うのもかなり好き」と続く。だいたい私もそんな感じである。あと小説がとても好きだ。

ああ、と思った。

よくアーティストとかが言っていて、ずっとよくわかっていなかったが、多分これがリスペクトってやつなのだ。

多分そうだな、と納得した。

Sさんがご存命の時に言っておけばよかった。でもこんなことになるなんて思わなかったし、自分でもよくわかっていなかった。


お別れ会はものすごく愛に満ちていて、ご友人がたの手で彼女がこれまで出した本が手前にずらっと並べられて、まるでSさんオンリーイベントみたいだよねって誰かが言っててみんな笑った。というかあんなに装丁に毎回凝ってたなんて私は知らなかった。私も装丁考えるのはまあ好きな方だけど、彼女の本はほとんど狂気の沙汰であった。お買い上げするとサークル主が自ら表紙を破って手渡すのが仕様とか……なんなんだ……。

彼女の歴代ジャンルのサークル名がリストアップされ、好きなアニメがずっと流れ続け、好きなお菓子とか好きなお酒とか好きな魚(鮭)とかがずらっと並んで本当によい会だった。みんなすごくいい人で、来てくれてありがとうって言っていただいて、これはもう言葉にならない。

私のジャンルが封神ですって言ったらザワッとされたんですけどね!!!

「あ、アニメの話に触れていいの……かな……?」って言われたんだけどね!!!

結局初対面の飛虎聞の方と、覇穹について嘆く会を開催したりしてたんだけどね。ありがとう覇穹、話題を作ってくれたことにだけは感謝する。こんなところで。

あっあとねあとね当時楊太描いてた人にお会いできたんだー!!わーやったね!!楊太で……よかった……。


一度だけ実際に会ったこともある。夏コミだった。もう二年も前になってしまった。

たまたまいるスペースが近いことに彼女が気づいてくれて、私は舞い上がってご挨拶にいった。

自称するところのキレッキレのCPヤ●ザであるSさんは、実際にはとっても優しくて柔らかい感じの方だった。

その時会っていなかったら、多分お声をかけていただいてもお別れ会に行く勇気は出なかったかもしれない。

会っておいてよかった。


でも、寂しいです。

お疲れ様でした。

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