風と共に去ったりした

最近読んだ小説の話。

封神あんまり関係ないです。

というわけで五月は小説「風と共に去りぬ」(本家)が面白すぎて死んでた。
文庫にして全五巻だが、なんでこんなに長いのかというと、4年間続いた南北戦争の戦前から東部戦線の銃後、および長い戦後を南側ブルジョアの視点から詳細に書いているからだ。
私にとって「風と共に去りぬ」は有名すぎるタイトルとマーガレット・ミッチェルのややエキセントリックなエピソード、あとはヴィヴィアン・リーの美貌を前面に出した映画が非常な名作とうたわれていることで、私は映画をあんまりみないくせに往年の映画女優のことを調べるのがすごく好きなので(日本女優では高峰秀子が好き)、その印象が強すぎて逆に固定観念がついていたともいえる。台本を読んだヴィヴィアン・リーが「こんなメス犬のような役は出来ない」と叫んだこととか。
スカーレット・オハラについてのイメージは「叶わぬ恋を追い続ける勝気な美女」って感じで、そういうのはかなり(ホモの次ぐらいに)好きなんですが、いかんせん長いなあ……って思ってた。
しかるに読み終わった後、強い印象に残った場面は何か。
あれですね。
アトランタから砲火の下をかいくぐって故郷に帰ってきたんだけど家には崩壊した南部同盟の発行した山のような紙幣しか残ってなくて、やばい!これじゃ家族一食分にしかならない!
という呆然とした場面ですね。
世の中金がすべてだぞ!

 

以下登場人物。
スカーレット・オハラ
「小説を読むと美人じゃない」という声も散見される。
実際最初の第一文で「美人というのではなかった」と書かれてはいるのだが、どう考えても作中では美人として扱われているのでそれはどうだろう。
当時の美的水準から外れてたのかもしれないが、華奢な体つきに黒髪で薄い碧い瞳で、肌はマグノリアみたいに白くて、顔立ちにはフランス貴族の優雅さとアイルランド貧農の力強さがあるってそれ美人じゃない…?美とは…?
能力的には小売りが大得意の商売人タイプ。
古典的な教養はなく抽象的な話も政治的な話もまったく興味がないが、数字には異常なまでの強さを発揮し、顧客との交渉の場で絶対に損をしないラインを即座に見定めることができる。
現世利益最優先の価値観を持つ完全なる俗物で、作中三回結婚しているが、すべては故郷を税吏から、家族を飢えから守り抜くため。
幼馴染のアシュレを唯一損得勘定抜きに愛している。彼の金銭関係への能力の低さに後半は悩まされることになる。
男たちにちやほやされたり華やかな装いをしたりするのは大好きだし、男の落とし方もいくらでも心得ているが、それはゲームの勝ち方を心得ているのと同じであり、一線を越えた先のことには全然興味がなく、生娘ぐらいの認識しかない。
愛するアシュレと結婚したメラニーを心から憎んでいるものの、メラニーを守るために戦火の中、死力を尽くして奔走する羽目になる。
貴族としての誇りと優しさを持ち続けた母と、無一文から身を起こしたアイルランドの貧農である父を、どちらも深く愛していた。

 

メラニー・ハミルトン
アシュレの妻。
やや不釣り合いなほどの大きな瞳とひどく小柄な子供のような容姿で、これも「美人とは言えない」と描かれているが、どう考えてもえらいロリータである。

彼女が長身の美男子である夫のアシュレといるところをスカーレットが見て、

「何よ、あんな子供みたいな女全然彼に似合わないわ」

などと憤然としているシーンがあったが、ここのスカーレットちゃん楊太に対するモブ女みたいで面白かった。あるよねそういう話……。

内面は本物の貴婦人であり、自分と子供を命がけで守り続けたスカーレットを心から愛している。
鋼の善意と信頼で築き上げた恐ろしい政治力の持ち主で、後半はアトランタの街の影のドンとなり、前科者のチンピラさえ心服させて忠誠を誓われるようになる。
アトランタの名だたる婦人たちがスカーレットへの陰口で盛り上がりまくっている所にたった一人で敢然と入っていき、スカーレットがこれまで自分のためにしてくれたことを数え上げ、婦人たちを糾弾する場面は圧巻。
アシュレとは哲学や文学を語り、深い友愛で結ばれているが、アシュレが実務能力に欠けていることもよくわかっており、死の床でスカーレットにアシュレの庇護を頼む。

 

レット・バトラー
怜悧な美貌を持つ皮肉屋の目利きの山師で、常にどんな時も金回りがいい。
チャールストンの名家の出だが、流れ者の祖父に似て家を放逐された過去があり、戦時中に自分の送金を拒んで母と妹に苦労をさせた父を憎んでいる。
「アシュレに失恋したスカーレットが、悔し紛れに花瓶をぶん投げて叩き割ったのを見て恋に落ちた」という、なんかだめんずの男版みたいな一面があるがそれは秘密。

常に本心が見えない皮肉交じりの態度で彼女の力になる。
恋をしていることを言わないのは、スカーレットが自分を愛している男を決して愛さないと知っているから。
「金を稼ぐベストチャンスは国が滅びる時だ」などと放言していたのが、スカーレットと結婚してできた娘を溺愛して一変し、娘の将来のため完璧な紳士として街の人間にも好かれるようふるまう。娘が夭折し、スカーレットへの愛に疲れ果ててアトランタから去ってゆくことになる。

 

アシュレ・ウィルクス
スカーレットが少女のころからこよなく愛した浮世離れした美男子。奴隷制にも南北戦争にも一貫して反対だった(これはレットも同じ)が、義務を果たすために従軍する。
その誠実さ、信仰の篤さ、教養の深さ、頭脳の明晰さや戦場における勇敢さなどは人後に落ちない完璧な紳士。しかし実際的なことにはかなしいまでに不向きで、失われた輝かしい南部の貴族的な生活世界から一歩も出ることができない。
戦争が終わるとほとんどスカーレットの世話になって生きる羽目になったことを恥じている。
実はスカーレットの激しさを愛しており、惹かれているが、必死で誘惑に抗っている。
(精神性に生きるアシュレは実はスカーレットの肉体に惹かれており、即物的な生き方をしているレットは実はスカーレットの心を手に入れたいと渇望しているという構図があるが、何も望まずにすべてを受け入れて愛するメラニーちゃんが一人勝ちなんじゃない?と思いました。これ百合小説なんじゃない?と思いました

 

そんなわけで、長いけど面白かったです。
ものすごくキャラが立っているのでつい書き記したくなった。

あと結構実は銀英書いた頃の田中芳樹、これにも影響受けてるんじゃない?って感じがしました。特にあのスタイリッシュなペーソス。あんまり根拠はないけど映画を見たひつじも同じことを言った……。

(創竜伝の米大統領は風と共に去りぬの映画ファンだけど小説は読んでない、という謎の設定があったな)

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